遅発性筋痛(Delayed onset muscle soreness:DOMS)について

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前回の記事で遅発性の筋肉痛について調べた時に、関連する様々な論文を読んだが、そのままにしておくのもそれとなくもったいないのでここにまとめておくことにする。気になると情報の根元まで調べたくなる癖があって、とめどないのだが最後まで調べても結局仮説しかない、みたいなことばかりなのだが。

色々調べているうちに、遅発性筋痛には色々と誤解があるように思えてきた。というのも、今までサッカー部や運動部で僕自身が教え込まれてきた俗説がかなり誤っていたからである。しかも、僕は誤解に基づいた行動を続けてそのまま大人になってしまった。そんな誤解を4つ紹介しよう。

誤解1:遅発性筋痛が起きなければ、トレーニング効果が低い

痛くならなければトレーニングが不十分と思いがちだが、それを否定する研究がある。痛みレベルを評価するために0〜10のスケールを用いて筋肉痛の程度と筋肉の成長度合いの相関関係を調べた研究であるが、筋肉痛の程度と筋肉の成長度合いに相関関係はみられなかったとされている。痛みは効果をはかる指標としてベストというわけではないようである。

誤解2:慣れればDOMSになりにくい

確かにそのトレーニングに慣れてくれば筋肉痛にはなりにくい。体がトレーニングに適応してきて、より効果的に筋線維全体に負荷を分散するようになることもその一因である。それが、定期的に運動パターンを変えるべき理由の1つでもある。しかしながら、痛みや筋肉痛にどれだけ感受性があるかという点に関しては遺伝的な素因を無視できない。

人によって、痛みへの感受性が低い、高いなど様々で 同じ負荷をかけても筋肉痛を鋭敏に感じる人もいれば全く感じない人もいる。遺伝子を変えることができない以上、痛みという指標とは別に、どれだけトレーニングすればどの程度効果が得られるかという自分なりの指標、感覚、幅なりを把握しておくことが大切になる。

誤解3:筋肉の損傷は悪

筋肉痛は筋線維の外傷に起因すると考えられているが、それは筋損傷の決定的な尺度ではないようだ。実際に、筋肉へのダメージと筋肉の再生度合いには相関なしとする研究がある。筋肉は自己再生する時に、同じ筋肉痛が再び起こらないように以前より大きく強くなる。これらのメカニズムは完全には解明されていないが、筋肉の損傷がタンパク質生産や筋肉の成長を促すために必要な要素であると考えられている。

誤解4:運動前後のストレッチはDOMSの予防に有効である

これは残念ながら無効であることが示されている。健康な成人に対する遅発性筋肉痛に対する運動前後のストレッチの効果について検討した研究を統合解析したコクランデータベースの系統的レビューでは、運動前後のストレッチの遅発性筋痛に対する効果はほとんどなかったと結論している。

運動前の静的ストレッチは怪我の予防にならないばかりか、運動のパフォーマンスを低下させるそうである。ウォームアップにもならず、身体をかえって眠りの方向へと導いてしまうようなのだ。

痛みを完全に回避することはできないかもしれないが、新しいトレーニングを徐々に取り入れていくことで、筋肉に適合と再生の十分な時間を与えることはできる。ルーティンの一部として、常に動的ストレッチ(Dynamic stretching)を含む適切なウォームアップ、及びクールダウンの時間を設けることは良いこととされている。

★運動後の筋肉痛から回復する方法について

これには色々な方法がある。マッサージは、症状を緩和するのに良い方法の1つだ。マッサージには血流改善効果があり、微細な筋肉の損傷を回復するのに役立つとされている。Journal of Exercise Rehabilitationによれば、運動後の筋肉痛にマッサージが有益であるということである。

他の、DOMSから回復するための一般的な方法としては、温水と冷水を交互にシャワーする、たんぱく質合成を促すためにタンパク摂取量を増やす、炎症を軽減させるためにオメガ3系脂肪酸を摂取する、睡眠を十分にとるといったことが挙げられる。

Clinical Journal of Sports Medicine によればサフラン摂取もDOMSを軽減するのに役立つ可能性があるそうである。

とにもかくにも、身体の回復を早める栄養素をとることは良いことだろう。色々対策などについて触れてきたが、これら全てを実行したからといってDOMSにならずに済むということではない。

★DOMS以上にひどい症状がある時はどうすれば良いか

トレーニングをやり過ぎてしまった場合。72時間〜96時間たっても痛みのが軽減せず、かえって衰弱したり手足の腫れがあったり、尿の色が濃くなりすぎたりした場合は受診した方が良い。それが怪我であれば、トレーニングの真っ最中に痛みを感じることができるはずで、それを無視しないことが大切である。筋肉の不快感は、DOMSの最も一般的な症状であるが、他の症状もある。例えば関節や筋肉の稼働幅が狭くなるとか、その部位の腫れや痛みがあったり、筋肉に力を入れられないなど。これらは運動の後徐々に現れる。運動の真っ最中に出る急性の痛みと遅発性の痛みを混同しないよう注意が必要である。

ついトレーニングのきつい部分に意味があり、痛みや苦しみがその良い指標になると思われがちだが(特に僕がいたような体育会系の運動部では)、怪我さえしなければ意義あることがもっと沢山できるし、長期的には、筋肉に呼吸と回復の時間を与えた方が、筋肉をより育てて強化することができる。普段スポーツ医学に関して調べることはあまりないのだが、運動する前に理論を学ぶことも時には必要かなと感じた次第である。

【参考文献】
1,Delayed-onset muscle soreness does not reflect the magnitude of eccentric exercise-induced muscle damage.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12453160
2,Muscle damage and muscle remodeling: no pain, no gain?
Flann KL1, LaStayo PC, McClain DA, Hazel M, Lindstedt SL.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21270317
3,Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise.
Herbert RD1, de Noronha M, Kamper SJ.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21735398
4,Effects of therapeutic massage on gait and pain after delayed onset muscle soreness.
Han JH1, Kim MJ2, Yang HJ2, Lee YJ2, Sung YH3.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24877051
5,The effects of ingestion of omega-3 fatty acids on perceived pain and external symptoms of delayed onset muscle soreness in untrained men.
Tartibian B1, Maleki BH, Abbasi A.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19451765
6, Preventive effects of 10-day supplementation with saffron and indomethacin on the delayed-onset muscle soreness.(PMID:24915175)
http://europepmc.org/abstract/med/24915175

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