【乳がん】乳がんの再発予防薬は長く続けた方が良いのか

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

乳がんの再発予防の定番とされるノルバデックス(成分名:タモキシフェン)という薬がある。基本的に乳がんは、女性ホルモンのエストロゲンの影響を受けて大きくなるので、この薬は乳がん細胞にあるエストロゲンの受容体を邪魔して、がん細胞の増殖をおさえよう。という主旨の薬である。

従ってホルモン療法(内分泌療法)として乳がんの治療に良く使われる。特にホルモン反応性が高い女性ホルモン受容体陽性乳がんに有効性が高いとされている。進行乳がんに使ったり、手術後の再発予防目的に補助療法に使ったりするのが一般的だ。この補助療法はここ最近までは、5年間続けるというのが通例だった。

何故、この薬を話題に出したかというと、最近「ノルバデックスを5年継続して服用するより、10年継続の方が再発率が低いと医師より説明を受けたので、多少の副作用には目をつむり10年続けることになりました」という人がちらほら増えてきたからである。
どちらが良いのかと個人的に質問を受けることもある。服用する人は当然気になるはずである。「最初は5年と言われて、ようやく終わりかと思ったら、追加で後5年も飲むのか」という人もいる。

5年余分に飲むと薬代は(薬価は2015/6/14時点)
先発医薬品:ノルバデックス(20) ¥322.4/日×365日×5年=¥588,380
後発医薬品:タスオミン(20) ¥204.5/日×365日×5年=¥373,212
5年で上記の差である。保険で3割負担だとしても先発医薬品でおよそ18万円、後発品でもおよそ11万円余分な出費となる。そして毎日飲むのは面倒といえば面倒である。では肝心の効果はいかほどか。

治療が10年計画に切り替わるきっかけとなった科学的根拠がどんなものか。これには2つの大きな研究が関わっている。その内の1つを今日は紹介する。それが英Lancet誌に掲載された、ATLAS試験というものである。
ATLAS trial (Lancet 2013 Mar 9;381(9869):805 full-text), correction can be found in Lancet 2013 Mar 9;381(9869):804
以下小難しい用語が多いので、線で区切った分は読み飛ばして結構。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
要点だけ訳して(訳筆者)箇条書きにすると
ー臨床試験について
•タモキシフェン10年継続は5年継続より、エストロゲン受容体陽性の
 早期乳がんによる死亡率及び再発率を減らす可能性がある
•12,894名の既に5年タモキシフェン20mg/日を服用済みの早期乳がん患者(女性)
をランダムに10年継続群と即中止群に割り付けた。
•6846名の女性(53%)はエストロゲン受容体陽性の癌
•10%はエストロゲン受容体陰性の癌
•37%は陰性か陽性か不明
•治療に継続に難ありと見られた場合は除外
•91%が10年のフォローアップを完遂
ー結果
エストロゲン受容体陽性女性 タモキシフェン 10年 vs 5年
乳がん再発率 18% vs. 20.8% (p = 0.002, NNT 36)
乳がんによる死亡率 9.66% vs. 11.6% (p = 0.01, NNT 52)
総死亡 18.6% vs. 21.1% (p = 0.01, NNT 40)
死亡率及び再発率の低下は10年継続では有意差が出たが、5〜9年では出なかった
エストロゲン受容体陰性もしくは不明の患者群では大きな差はなかった
乳がん再発前のその他のアウトカム解析
(エストロゲン受容体ステータス関係なし、全ての女性)
10年継続で次のリスク上昇に関与
子宮内膜癌 (event rate ratio 1.74, 95% CI 1.3-2.34)
肺塞栓症 (event rate ratio 1.87, 95% CI 1.13-3.07)
     次のリスク低下
虚血性心疾患 (event rate ratio 0.76, 95% CI 0.6-0.95)
対側乳がん (event rate ratio 0.88, 95% CI 0.77-1)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
上記の結果はざっくばらんに言うと「10年飲めば、5年飲んだときより死亡や再発が2%位減る」あるいは同じ事実を別の言い方で表現すると、「10年続ければ 4,50人に1人の割合で再発or死亡を免れる」といったところである。一方で長く続けると、肺塞栓などの血栓症や子宮内膜症、子宮筋腫、子宮内膜癌などの発症率が増える。メリットもあればデメリットもあり。それは薬の世界では当然といえば当然だが、優先順位を高くして考えるべきエンドポイントといえば「死亡」である。5年〜9年ではそう変わりないというのも少しひっかかるところではある。1つの論文例だが、例えば自分が対象患者だったらこの結果ではっきり判断できるだろうか、などと思ってしまう。もっと判断基準が欲しいかもしれないし、その人の背景、価値観、経済力など様々な要素で判断は変わるであろう。

先日90歳過ぎのお婆さんがこの薬を開始された例をみた。「これから続けられるだけ続けて出来れば5年以上飲んで」と医師から指示されたそうだ。さすがに、どうなのかと疑問に思った。科学的根拠などといっても、こんな感じで白黒つかない結果ばかりなんだよなぁ。しかし、世の中乳がん再発予防といってもこの薬で5年か10年かの二択しか無いというわけではないですから、一歩ひいて見ても良いかもしれないけど。他の方法で再発率は下がるのか研究しているものもあったりもする。信頼性の高い情報を取る術をご自身で身につけるのも良いかもしれない。

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