【骨粗鬆症】女性ホルモンのように働く薬ーラロキシフェン(エビスタ)

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エビスタ(成分名ラロキシフェン)という主に、骨折予防に使われる薬がある。ラロキシフェンは女性ホルモンの一種である卵胞ホルモン(エストロゲン)と同様に作用して、骨のカルシウム分が血液に溶け出すのを防ぐ作用がある(骨吸収抑制作用)。結果、骨の密度が増加し骨が丈夫になり骨折予防になるという。副作用でわりと多いのは、乳房の張り、ほてり、吐き気などであるが、大抵2~3カ月と続けるうちに慣れる体が慣れることが多い。重い副作用は非常に稀であるが、血栓症には注意が必要で痺れ感などの初期症状には注意が必要である。

僕自身はあまり注目していなかった薬だが、たまたま調べる機会があって良くみると、ベネフィットも害もさほど多くはないなという印象であった。まずラロキシフェンは脊椎骨折を半分に減らすとうたわれている。その根拠となる骨粗鬆症に対する予防効果は主にMORE試験とCORE試験で検討されている。ラロキシフェン60mg/日,120mg/日、プラセボに割付けて比較したもので、全ての被験者はカルシウム500mg/日、コレカルシフェロール400-600units/日を服用している。6828(88.6%)の女性が36ヶ月の時点でレントゲンによる評価を受けた。結果は以下の通り。
raloxifen
上記の表から、大雑把にはプラセボと比べて骨粗鬆症にともなう脊椎圧迫骨折を半分くらいに減らせるという結果は一応出ている。しかし、寝たきりの原因となりやすい大腿骨頸部骨折、あるいは手関節周囲骨折の抑制効果は認められていない(J Clin Endocrinol Metab 2002 Aug;87(8):3609 full-text)。
つまり脊椎骨折以外の骨折には明確な効果はない。副作用で良くあるのが血栓症でラロキシフェンを服用している方の血栓症のリスクが3.1倍高かった。(ラロキシフェン60mgと120mg/日は1%、プラセボで0.3%、NNH143:143名ラロキシフェンを飲めば1人は血栓症を余計に起こす) (MORE trial JAMA 1999 Aug 18;282(7):637 full-text)

余計な計算だが、ポジティブに解釈して3年間飲み続けて29人に1人予防できたとしよう。60mg1錠=118円なので、118円×365日×3年×29名=3,747,090円かけてようやく1人の骨折を防ぐ。研究では、骨ミネラルの密度は上がっているようではある。骨折は特に高齢者には生活上ダメージが大きいので予防が大切なのは言うまでもないにはしても、医療費をみるとなんだかなぁと思ってしまう。

因みに、MORE試験を8年延長した試験においてラロキシフェンで乳がん発生リスクが下がることが示されている。といっても侵襲性乳がんが1000人に5人から1000人に2人に減ったという程度(NNT334/年)なので大した予防効果はない。因みにその8年で肺塞栓リスクは0.62% vs. 0.16% (NNH 217)とラロキシフェン服用で上昇している。死亡率には有意差がなかった。率直に言ってこの観点から飲む意義はあまりないように思う。(CORE trial J Natl Cancer Inst 2004 Dec 1;96(23):1751 full-text)
そもそも乳がん予防という観点からはタモキシフェンの方が有効性に優れており(これに関しては以前触れた)、ガイドラインでも乳がん再発予防にはそちらが推奨されている。

エビスタに関して様々な評価項目を検討した試験で信頼度が高いものと言えばRUTH試験だ。10101名の55歳より上の閉経後女性で冠動脈性心疾患か心血管疾患リスク因子を複数もつ女性をラロキシフェン(エビスタ)60mgとプラセボにランダムに割付け、中央値5.6年間追跡した試験である。913名(9%)は研究から途中で脱落し、1149名(11%)は研究の途中で死亡した。多くのアウトカムで有意差はなく、ベネフィットがほとんどない割に副作用が比較的多く起こることが示されている。先のMORE試験よりも試験デザインの質が高いので、より実態に即した数値ではなかろうかと勝手に思っている。同試験の結果を下表にまとめる。
raloxifen_ruth
まず、主解析についてだが、エビスタは心血管イベントを減らさないことが示されている。そして乳がんと脊椎骨折リスクをごく僅かに減らすが致死性脳卒中と静脈血栓症をごく僅かに増やす。そして火照り、足の痙攣やむくみは3,40人に1人は出るので中々高頻度な副作用である。害とベネフィットのバランスをみると飲む意義が疑わしくなる薬である。1錠118円もするのに、この程度ではなぁ。などという印象を持っていたのだが、この薬に関連して上記のような臨床研究ではなく基礎研究で面白い発見が最近あった。それを次回紹介する(そもそも、それがこの薬を調べ始めたキッカケなのだ)。

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