がん発生の要因ー修復と制御機構がありながら何故発生するかー

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前回、がんの発生原因は遺伝子の変異であると書いた。それでは、何が原因で遺伝子の変異が起こるのだろうか。DNAの変異を起こす物質を変異原物質という。日常生活でも、宇宙線、紫外線を浴びているし、CTやレントゲンをとれば放射線を浴びる。環境ホルモンと呼ばれる内分泌かく乱物質、化学物質、たばこ、食品などこれらは全てDNAにダメージを与えうる変異原物質である。ウイルスや細菌も変異原物質であり、治療対象となりうる。下表に代表的なものをまとめた。
がん関連ウイルス
こうしたウイルスや細菌にターゲティングした治療薬やワクチンも開発されている。また、こうした外的要因だけではなく、内的要因でもDNAは損傷しうる。

内的要因の例としては、活性酸素、活性窒素などの酸化ストレス、肥満などの生活習慣病に伴う慢性炎症などがある。それに加えて、通常同じ染色体をもつ細胞がコピーされる細胞分裂において、DNAのミスコピーが長い年月のうちに生じる場合もある。

DNAの修復機構
こうして考えていくと、様々な内的外的要因でDNAは日常的に損傷を受けていることが分かる。一説には、1つの細胞で1000〜2000ヶ所あるいはそれ以上の損傷を受けているという。それでは、皆が皆、がんになるかというとそうはならない。なぜかといえば、損傷を受けても元に戻す機能があるからということになる。これをDNA修復機構といい、DNA修復遺伝子がその役割を果たしている。DNA修復することで、がんを抑制するという意味で、DNA修復遺伝子もがん抑制遺伝子の1つである。

ダメージを受けやすい遺伝子
例えば、大腸がんで高頻度に変異が認められるK-RAS遺伝子ではランダムに変異が発生するのではなく、変異の種類や起こる部位が大体決まっている。なぜそうなのかは不明だが、K-RAS遺伝子の特定部位に変異があると大腸がんになりやすいらしいという事実だけが分かっている。その他の部位でも損傷は受けていても、そちらは修復可能あり、その特定部位はそうではないということなのかもしれない。

がんを制御する機構はあるが、そこで起こりうるミス
細胞はDNA損傷などの異常は検知して細胞周期を一旦停止させる機構を有する。これを細胞周期チェックポイント機構といい、その制御を担っている遺伝子の1つがp53である。p53はDNAが損傷を受けた時に、修復可能かどうかを判断して、修復出来る損傷であれば細胞周期を一時停止させ、修復機構を誘導し、修復後は細胞周期を再び開始させる命令を出す。逆に修復不可能と判断すれば細胞死(アポトーシス)を誘導する。どちらに転んでも異常細胞を残さないようにしようということだ。

それでもミスは起こりうる。p53にも変異はおきうるし、他の修復機構を司る遺伝子も同様である。修復機構能力には個人差もある。それが弱ければ、DNAが修復されないまま細胞が増殖する。そういう場合、修復不能となり細胞死(アポトーシス)が誘導されるが、これを誘導させる遺伝子にも変異があると、やはり損傷を受けたままの細胞が増殖する。

つまり、損傷をそのまま残さないための制御機構が何段階もあるが、それでも各ステップで異常が起こる可能性がある。

エピジェネティック異常
発がんにはDNA塩基配列を伴う変異(ジェネティック変異)だけではなく、DNAの変異を伴わないエピジェネティックな異常も関与する。エピジェネティクスとは遺伝子の「発現」にフォーカスした考え方である。近年、様々な物質や栄養素が遺伝子の発現状態に影響を及ぼすことがDNAシークエンシングという技術により明らかにされている。遺伝子レベルで何を摂れば良いかということが明らかになりつつある。

エピジェネティック修飾には、DNAメチル化とヒストン修飾(メチル化、アセチル化)があるが、発がんにおいては、この修飾の異常が起こることで遺伝子発現の異常が見られることが分かっている。こうしたエピジェネティック修飾の異常が、例えばがん抑制遺伝子に起こったとすれば、先に述べた遺伝子変異と同じ機能欠失(loss of function)と同等の影響を及ぼすことがある。発がんは1つのエピジェネティック異常ではなく、それが積み重なることでだんだんと悪性度が強くなる。つまり多段階のプロセスである。

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