がんは遺伝するーではどう対策するのか、そして個別化医療へー

Pocket
LINEで送る

始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

遺伝性のがんと散発性のがん
以前、がん関連遺伝子についてまとめた。がん家系などといわれるようにがんは遺伝するものなのだろうか。例えば、片方の親ががん抑制遺伝子に異常をもつ人の子供は、遺伝的にその素因を引き継ぐので、生まれながらにして全身の細胞にあるそのがん抑制遺伝子の片方に異常を持つことになる。つまり、がんになる率が高まる。これが遺伝性のがんである。

例えば、乳がんではがん抑制遺伝子のBRCA1およびBRCA2が発生に関与することが分かっているが、通常遺伝性ではない場合はBRCA遺伝子が2段階の変異を受けてがんが発生するのに対し、遺伝性乳がんの症例では1段階の変異で発症することになる。要は普通の人がワンツーヒットで発症となることを、遺伝的素因を持つ人はワンヒット目が予め終わっているのでワンヒットのみで発症となる。

そんな事情もあり、乳がんの発生は高頻度である。しかも若年で発症することが多くなる。また、全身の細胞でその異常があるために、両側に乳がんが発生することが多く、さらに他の乳腺にも乳がんが発生する「多発」という状況も起こりやすい。

両親に遺伝的素因がないのに遺伝性乳がんを発症することがある
なぜそんなことが起こるのか。遺伝的素因がないのに変異が起こるのを、de novo突然変異という。De novoはラテン語で「新たに」を意味する。英語でいうと「from the new」といった意味である。

De novo突然変異とは両親ともBRCA遺伝子に異常はないのにも関わらず、受精卵の分化過程でBRCAに傷を受けた例で、やはり細胞全てにBRCA遺伝子の異常を持つことになる。つまり家族歴からは遺伝性か否か判断ができないので、de novoの症例がどのくらいの頻度で存在するかははっきりと分かってはいない。

遺伝性乳がんは全体の5〜10%と言われるが、数値に幅があるのは、こうした頻度不明の部分があるためであろう。BRCA遺伝子の異常は遺伝性ではない乳がんでも起こりうるが、それは乳腺の1つの細胞にあるBRCAに変異を受けたことによるものなので、そこから分裂した細胞のみにBRCA変異が認められる。これが遺伝性のがんとそうでないがんの大きな違いとされている。

遺伝子検査によりその後の治療方針を決定
遺伝子検査といっても、遺伝性のがん(de novo症例含む)でみられる生殖細胞系列の異常を調べるのと単発で発症する異常を調べるのでは、調べる細胞も異なれば検査方法も目的も異なる。従って両者を分けて考える必要がある。

1、遺伝性のがん
遺伝性では、全身の細胞遺伝子に変異があるので血液検査が可能である。
検査目的は主に発症前診断であり、遺伝性変異の産むとがん発症の可能性の推測ということになる。遺伝子検査で、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(BRCA1•2遺伝子の変異を生まれつきもち、乳がんや卵巣がんになるリスクが高い)と診断された女優のアンジェリーナジョリーががん予防のために両乳房切除と卵巣摘出を行ったのにはこうした理由が隠れている。因みに日本では、この遺伝子検査も予防的手術もまだ保険適用外である。がんに対する死亡率も意識も欧米と日本ではかなり差がある。

2、散発性のがん
こちらは、変異のある細胞を検査しなければならないので、手術や針生検などで、がん組織を採取して検査する必要がある。部位にもよるが一般的に生検には痛みや感染症リスクがつきものである。また、その目的も悪性度の確認や、その後の治療方針決定のためとなる。

遺伝子に応じた治療法を選択するーコンパニオン診断薬で分子標的薬の適応症例を選択するー
最近では、特定の遺伝子に変異があるか否かで分子標的薬といわれるタイプの抗がん剤の効果に差がでることが分かっている。そのため、患者毎に遺伝子の発現状態を確認する施設が増えている。例えば乳がんの治療薬であるハーセプチンは乳がんのがん遺伝子であるHER2に対する抗体薬なので、HER2の発現が亢進している症例のみ効果が得られる。

K-ras変異に関連する薬としてアービタックスがある。この変異があるとアービタックス投与でかえって寿命が縮まることが分かっており、基本的にK-ras変異を調べずに使うことはない。因みにK-rasは日本人では20〜40%に変異があるとされている。調べずに投与しては有害であるばかりか、高い治療費がかかり本末転倒となる。

これまでの抗がん剤は、開発時に全体の3割程度に効果があれば、非常に有効であると評価されてきた。しかも、投与してみるまでは効果があるかないか分からないという状況が多々あった。そこで、その3割を見極める方法がないかと考えだされたのがコンパニオン診断薬である。

コンパニオン診断薬は分子標的薬とセットで使われるため、そのような呼び名になった。因みにCompanyとかCompanionというのは「Com(共に)」「pan(パンを食べる)」という語源による。役割は、標的分子の発現、遺伝子変異の有無、薬物代謝酵素の遺伝子多型などを予め調べて薬剤の有効性や副作用を予測することである。いわばプレ診断薬である。

近年分子標的薬とセットで開発されるようになり、予め効果が得られやすい症例を選択することが可能になっただけではなく、効果が得られないと分かった症例に対しては、他の治療法を選択するという個別化医療が可能となってきている。

↓ ↓ ↓この記事に共感した、面白かったらこちらをクリック!
dqranking  dqmura

 ご案内

講演、取材についてご相談、お申込み

薬についてのご相談

薬局のお悩みについてご相談

↑トップページに戻る

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Translate:

アーカイブ

ar

おすすめメディア集

hymkbanner

セールスが苦手だからこそ、出来る!作れる!売り込まないセールス設計とは、お客様から選んでいただける体制を作れればいい。その体制は、あなたのビジネスの「強さ」と「違い」を作り出し、活かすことで構築できる。その構築方法をお伝えしています。

ファーマシストフロンティア

私も連載している人気マガジン。広告によって編集内容が左右される従来の雑誌とは一線を画し、実相を探求したウェブマガジン。必要とされる薬剤師になるための必読書、それが『ファーマシストフロンティア』です。

お問い合わせ

インバウンド003

facebookページ(いいねを押していただけると励みになります!)

PAGE TOP
Translate »