がん予防の時代へー遺伝性乳がんの発症前診断と予防的治療の可能性

Pocket
LINEで送る

始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

生涯でがんが発生する確率を浸透率というが、遺伝的素因があり浸透率が高い方への予防的対策として考えられるのが、遺伝子治療である。これまで遺伝子の異常をなんとか治療できないかと色々と研究はされてはいるようである。遺伝子そのものの編集技術や栄養的介入に依る発現状態の調整技術は研究が進んでおり、イメージでは何となくできそうに感じられるかもしれないが、遺伝子異常を補うのはかなり難しいとされている。

異常のある遺伝子を補えたとしても、それを必要な細胞の部位に送ること自体が困難である。仮に送れたとしても、すぐに代謝され効果が一時的でしかないという問題がある。女優のアンジェリーナ•ジョリーが受けた遺伝性乳がんの発症前診断と予防的乳腺切除術は、日本では保険適応外であるが、予防的治療として取り入れられるのではという意見もある。

欧米人と日本人では乳がんの発症率がかなり異なり、欧米は8~10人に1人と高率なのに対して、日本では15~20人に1人くらいなので、意識の持ちようも異なってくるだろう。日本では欧米ほど取り入れられないかもしれないが、乳がんの遺伝的素因をもった方の選択肢となりうる。

そうした素因をもった人には、それに応じたフォローのプログラムが必要になるだろう。それで経過観察して、早期発見早期切除のような手段もありうる。

BRCA1に異常があると乳がんのみならず、卵巣がんも高率に発症する。乳がんは組織の特異性から、比較的早期に発見が可能であるが、卵巣は体の奥にあるので見逃されることが多く、発見した時にはかなり進行していることが多い。予防が大切になる所以である。また、抗女性ホルモン薬であるタモキシフェンによる予防も1つの選択肢である。

タモキシフェンはエストロゲン受容体陽性の乳がんについては、高い予防効果がある。ただし、BRCA1に異常がある場合はエストロゲン受容体陰性の乳がんが非常に多いので、その場合は予防効果が得られなくなる。

BRCA遺伝子異常による乳がん浸透率
BRCA1に変異があったとしても、全ての人で浸透率が同じわけもなく、あくまでも変異は発ガンのきっかけ(イニシエーター)であり、実際に発症するかは個々の体質や環境要因で大きく異なる。

それらを加味して浸透率が計算されるのだが、日本ではこの浸透率についてのデータがない。大規模な家計調査を長期間にわたり実施しない限りこうしたデータはとれないためである。また、遺伝性疾患に対して捉え方がネガティブな部分があり、家系調査をするにしてもそうおいそれとは情報を出せないということもあるのかもしれない。

遺伝子レベルでの病態の理解が進み、がんの医療技術は目覚ましい進歩を遂げたが、がん克服のためにさらなる分子機構の解明と治療法の開発が進んでいる。近年開発されている、免疫ペプチド療法、樹状細胞ワクチン療法などの免疫療法や、陽子線•重粒子線治療などにも新たながん治療の選択肢として期待が寄せられている。将来的には幹細胞やiPS細胞を用いた再生医療の発展もありうる。ほとんどが、驚くほど高額な薬剤なので、どこまでやるかという問題は常にあるにしても。

↓ ↓ ↓この記事に共感した、面白かったらこちらをクリック!
dqranking  dqmura

 ご案内

講演、取材についてご相談、お申込み

薬についてのご相談

薬局のお悩みについてご相談

↑トップページに戻る

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Translate:

アーカイブ

ar

おすすめメディア集

hymkbanner

セールスが苦手だからこそ、出来る!作れる!売り込まないセールス設計とは、お客様から選んでいただける体制を作れればいい。その体制は、あなたのビジネスの「強さ」と「違い」を作り出し、活かすことで構築できる。その構築方法をお伝えしています。

ファーマシストフロンティア

私も連載している人気マガジン。広告によって編集内容が左右される従来の雑誌とは一線を画し、実相を探求したウェブマガジン。必要とされる薬剤師になるための必読書、それが『ファーマシストフロンティア』です。

お問い合わせ

インバウンド003

facebookページ(いいねを押していただけると励みになります!)

PAGE TOP
Translate »